「告白されて付き合いだして、高三の夏に浮気されてそれで……。大学は別々だったからその間は忘れてたんですけどね。それも〝つもり〟だっただけで、たぶんずっと引きずってたんですかね。半年前、異動してきた瀬良さんを見た途端……気づきました」
一拍置いてから「まだ、残っている気持ちに」と続ける。
思いのほか、なんとか絞り出したような声になってしまった。
湿っぽい空気にするのは気まずく感じて、慌てて笑顔を作る。
「あれです。ひよこは初めて見た相手を親鳥だって思っちゃうっていう、あれ。私のこの気持ちも、きっとすり込みみたいなものでしかないと思うのに……自分でもどうしょうもできないんです」
明るく笑い、〝あれ〟と人差し指を天井に向ける私を、北川さんはただ真面目な顔で見ていた。
その瞳にはずっしりと重いなにかを感じ……自分の気持ちを笑いながら説明する自分が、だんだんと情けなく思えてきてしまう。
自分を偽らず見せている北川さんに対して、私はそうではない気がしてきて、なんでだか目を合わせていられなくなった。
真面目なひとを前にすると、言葉にされなくても自分の非を責められているように感じてしまうというアレなのかもしれない。
一緒に夕食をとるのは、北川さんの女性恐怖症が少しでも軽減されればいいという思いからだ。北川さんに頼まれたから。
その場で私の話をするのはおかしい。
だから必要はないと、ひっこめるつもりだった言葉が……沈黙の圧に負け口をつく。



