恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―




今日、北川さんが指定したのは、会社から三駅ほど離れた場所にある料亭だった。

黒一色の外壁に、黄緑色の引き戸という色合いは遠目からでも目立つけれど、デザインがシンプルなせいか、上品に感じた。

店内も黒を基調としたシックな雰囲気で、仕事帰りにふらっと立ち寄れるようなお店ではないことだけは確かだった。
私が普段使うようなお店とはレベルが違う。

どうして北川さんはこういう素敵なお店を知っているのかと尋ねれば、いいお店で食事をするのが趣味だという答えが返ってきた。

「この店は初めてだったが、雰囲気も料理も悪くないな」

茶碗蒸しを食べながら言う北川さんにうなずく。

「はい。お料理もとってもおいしいですし、店員さんも物腰が柔らかくて話しやすいですね。一応、創作料理のお店になるんでしょうか」

並んでいる料理を眺めながら聞くと、北川さんが「そうだな」と答える。

六畳ほどの個室のテーブルに並ぶのは、牛肉のたたきの握りや、野菜の天ぷら、蒸しエビや野菜たっぷりの生春巻きに、茶わん蒸しと、目にも美しい料理の数々だ。

今日もなかなか高そうな会計が心配になる。

北川さんはもとからこういった素敵なお店を開拓するのが趣味だとは言っていたけれど、ひとりとふたりじゃかかる金額が倍だ。
ハンバーガーやファミレスなら、奢ってもらってもラッキーくらいに思ったかもしれないけれど、こんな高級店ばかりじゃさすがにそんな楽観的には思えない。

今まで出してもらった分もあるし、今日は私が支払おう……と心に決める。
生春巻きを食べていると、ふと、向かいから送られてくる視線に気づいて顔を上げた。