恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



私が聞く花聞く花、全部をさらっと答える瀬良さんに、どんどん楽しくなって『じゃあ、この花の名前は――』と笑顔で振り向いたときだ。

思ったよりも近くにあった瀬良さんの顔に驚いて、しゃがんだ状態から尻もちをつきそうになった私の腰を瀬良さんが抱き留め、そのまま――。

思い出したのは甘い甘い時間だというのに、なぜか胸はチリチリと細かい痛みを感じるばかりで目を伏せる。

「それより、ここに何か用事? もう閉めるところだから……」
「うちの母親が朝、言ってた。〝千絵ちゃん、すっかり綺麗になっちゃって〟って」

立ち上がった私に、瀬良さんが言う。
わずかに笑みを浮かべた表情からは感情がよみとれず、私をじっと見つめる瞳に視線を返しながら「そう」とだけ答える。

再会してからたまに見せる、こういう意味深な笑みは苦手だ。

私を意図的に期待させようとしているような態度や言葉が心を揺さぶるから、苦しくてたまらなくなる。

喜んじゃいけないのに喜んでしまう。
想ったって無駄なのに、惹かれてしまう。

喜んだって想ったって、それを全部止めるのは、私自身だっていうのに。

じっと見つめていると、瀬良さんはおもむろに背中を壁に預けた。そして、ふっと笑みをこぼす。

「俺もそう思う。会社で顔合わせたときもびっくりした。ああ、高校の頃が可愛くなかったとかそういうわけじゃなくて……」

「いいよ。瀬良さんの評価はどうでも」

ぴしゃりと遮るように言うと、瀬良さんは不満そうに眉を寄せた。