絶対に非現実的な広さのモデルハウスは鍵をかけて回るだけでも大変で、こんな家に住めたら素敵だろうけれど、掃除の面倒くささが勝つだろうなと思ってしまう。
仕事だし、第一に埃以外の汚れがつかないから私だって毎日毎日掃除できるけれど、これが自分の家で、しかも日常で出る汚れがたされたら……と考えると嫌気が差す。
日中、暇な時間を見計らってフロアワイパーを丁寧にかけた階段を下り、一階の確認に移る。
キッチンにある裏口や、トイレの窓までしっかりと見て、それぞれ電気を消したあとで和室に移ると、床の間に飾ってある花が目を引いた。
今朝、瀬良さんのお母さんからもらった花は、花瓶に移されても綺麗に咲いていた。お昼に交代した柿谷先輩に、今回のこの花も好評だった。
丸い形をした白い陶器の花瓶から飛び出た色とりどりの花は、まるで花火みたいに綺麗だ。
「いろんな花瓶があれば、もっと綺麗に飾れるんだろうけどなぁ」
あいにく、モデルハウス用の花瓶はひとつしかない。
経費でいけそうだけど、今までこのひとつでやってきて、それが割れたわけでもないのに申請したらなにかしら言われそうだ。
今までずっと暗黙のルールでやってきたことを変えるには勇気がいるしなぁ……と考えながら、花瓶の前に膝をつき、指先で花びらを撫でる。
「なんて花なんだろうなぁ」
こういうボリュームのある花はたまに目にするし可愛いと思っていたけれど、名前を知らない。
あとで調べてみようと思い、携帯で写真をとり終わったとき、独り言だった疑問に「ラナンキュラス」と返事がきて肩が跳ねた。



