「ありがとうございます。おばさんからもらうお花、いつも綺麗だって評判なんですよ。……私が活けるせいで、ちょっとくすんじゃってるかもですけど」
おばさんがこうしてお花をくれるのは、初めてじゃない。
もう何度も頂いていて、毎回私はそれをモデルハウスに飾っている。
季節の花は、柿谷先輩にも部長にもとても好評だ。
「なに言ってるの。千絵ちゃん、昔から字だって絵だって上手だったじゃない。それにこういうのは気持ちだもの。なんだっていいのよ」
お花を簡単に包装しながら笑うおばさんに、苦笑いをこぼす。
「フラワーアレンジメント教室やってるんですよね? いいんですか? 大事なのは気持ちだなんて言っちゃって」
「そうだった。ここだけの話にしといて。技術も大事だわ」
ハッとした顔をして口止めをしてくるおばさんにうなずいていると、おばさんは「それにしても」と話題を変えた。
「柊二と千絵ちゃんがまさか同じ職場になるとは思わなかったわー。偶然ってあるのね」
「そう、ですね。本当に」
「ねー」
嬉しそうな顔で言ったおばさんが、出来上がった花束を「はい」と渡してくれる。
それを受け取り「じゃあ、私はこれで」と頭を下げた。
「気を付けてね。いってらっしゃい。あ、今日は夜から雨らしいから傘……持ってるわね。よし」
「はい。ありがとうございます。いってきます」
十七時を回ったところで、モデルハウスの戸締りと消灯にかかるために二階に上がる。
夜から雨だという予報はどうやら当たりらしく、いつもならまだ明るさを残しているはずの空はどんよりと雲に覆われていた。
晴れていればこれでもかというほど明かりが差し込む大きな窓の鍵を確認して回る。



