恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



触れられていると言っても、手首から十センチほど上ったあたりだ。七分袖でも、隠れないような、見られても全然恥ずかしくない部分だ。オフィシャルな部分。

それなのに、北川さんの指先がそこを撫でるのが、とても恥ずかしく感じるのはどうしてだろう。

体の芯がじわりと熱を宿す。
北川さん相手にこんな気持ちになっている自分がとてもいけない気がして、腕を離してもらうように言おうとしたけれど、見上げた先にあった、真摯な瞳に撃ち抜かれる。

私を見つめる北川さんの目は、真剣そのもので……男の色をしていて、息をのんだ。

「白石以外の女はまだダメだが、白石には触れたいと思う。これ以上、もっと深くまで」

いつもは耳障りのいい声が、ぞくぞくする色気を含んでいた。
答えに迷った私は、一度唇を噛みうつむき……それからゆっくりと北川さんと目を合わせた。

「それは……私が〝先生〟だからですか? 時間をかけて慣らした相手だからっていう、それだけの理由ですか?」

雛と親鳥。先生と生徒。時間と慣れ。
そういった理由から北川さんが錯覚を起こしても、おかしくはない。お互い、弱い部分を見せ合ったし、そういうときに傍にいてくれた相手には心を開きやすい。

吊り橋効果ってやつだ。

だから聞くと、北川さんは私を見つめたまま首を横に振って「違う」とハッキリ否定した。

北川さんが「瀬良とのやりとりを見たから思ったわけじゃないと、先に言っておく」と前置きした後で告げる。

「俺は、ずいぶん前から白石に触れたかったし、それは、自分のものにしたいという男の勝手な欲からだ。白石が支えてくれたから、という部分については否定できない。それでも、白石だったから惹かれたんだと断言できる。他の誰かじゃ、こんな気持ちにはならなかった」