恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



ようやく涙が引き、はーっと深呼吸をする。

目の周りがまだ熱いけれど、少しすれば引くだろう。どうせみんな他人の顔なんて見ていないんだから大丈夫だ、と思いながら隣を見上げた。

「北川さんがあそこまで言うの、珍しいですね」

私をずっと見ていたのか。
すぐに目が合った北川さんが「俺もそう思う」と答える。

「自分では冷静なつもりだったが、そうではなかったかもしれない。白石から見て、行き過ぎた発言があったのなら、あとで瀬良に謝る」

「あ、いえ。たぶん、大丈夫かと。……それに、今回の件で瀬良さんが傷ついたのなら、原因は私ですから。北川さんには責任はありません」

ハッキリと言い見上げる。
北川さんはそんな私をじっと見つめたあとで「そうか」とこぼした。

細い路地には、相変わらず人気はない。
ビルとビルの合間に見えるわずかな空に、飛行機雲が見えていた。

ぼんやりと眺めていると、北川さんが静かに話し出す。

「白石は明るくて優しい。性格がいい。見方によってはお人よしかもしれない。でも、だからといって、自己主張ができないわけでもない。それが、当初の印象だった」

急に語られたことに、どう返せばいいのかわからずただ見ていると、北川さんが続ける。

「最初の印象が間違っていたわけではない。でも、同じ時間を過ごすなかで、それだけじゃないんだと知った。儚く、脆い。そして、頑固で真面目だ」

空を見たまま、「知れば知るほど、触れたくなった」と言われ……思わず息をのんだ。
そんな私に視線を留めた北川さんは、しばらく私を見つめたあとで、向き合うように立ち直した。

目の前に立った北川さんが、すっと手を差し出す。

「白石。手を出してもらってもいいか?」
「あ、はい」

北川さんが出した手のひらに、重ねるように手を置く。ギュッと握ってきた手は、私と同じ温度だった。

ひとは、大きな緊張や不安を感じたときに手が冷たくなる。それは、北川さんと会うようになってから得た知識だ。

最初の頃は私が先生だったのに、最近では手を冷たくしていたのは私の方だったなと思う。
何度も、北川さんの熱に助けられた。