恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



「でも、たった一回なんですよ。それだって、俺にとっては仕事上、仕方なくだったけど、今はちゃんと反省も後悔も……」
「〝たった一回〟だったら許されて当然だと考えているなら、それは思い違いだ。そもそも、体の関係を持たなければ円滑に進まないよな仕事のやり方がおかしい。厳しいことを言うようだが、瀬良が甘かった証拠だ」

北川さんがぴしゃりと言い切ると、瀬良さんはぐっと押し黙る。
そんな瀬良さんに、北川さんはややしたあとで聞く。

「ずっと思っていたんだが。裏切った側の瀬良が、白石を責めるのはおかしいんじゃないか? 〝たった一回〟でも、何年経っていても、傷つけられた側の白石が許せないと言うなら、白石の傷が癒えるまで謝り続けるのが誠意だろう」

「……俺だって謝りましたよ。それこそ何度も。でも、何度謝っても全然前みたいには戻れないし、嫌にもなるじゃないですか。せっかくヨリ戻せたのに、いつまで引きずってるんだよって。だって俺は千絵の前にいるのに、ずっと不安そうな顔してるから……」

「それだけのことを瀬良がしたんだろ」

決して大声を出したわけではないのに、北川さんの一言に、瀬良さんはピタッと黙った。

「どんな軽い気持ちだろうが、事情があろうが、瀬良は白石を裏切った。白石がそれを今も吹っ切れていないのは、その傷が相当に深かったってことだ。それだけ瀬良を想っていたということだ。呼吸の方法さえ忘れるほどに」

最後、一拍空けて「それを知った上で、まだ白石を責めるのか」と聞いた北川さんに、瀬良さんはなにも返さなかった。

両腕を力なく下ろし、目を伏せた瀬良さんからは、先ほどまでの、痛いほどの感情は感じられない。
気力をなくしているように見えた。

「諦めたくないと言う瀬良の気持ちはわからなくはない。本気だということも疑わない。……それでも、泣かせたいわけではないだろ」