恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



「なぁ。千絵だって、俺のこと嫌いじゃないだろ? あんなに想ってくれてたのに、それを忘れられんの? 無理だろ? 結局、俺のこと意識してるから、ツンケンしてたんだろ?」

瀬良さんの声に含まれる感情の量に、心が揺すぶられる。
切実に訴えてくる表情は、見ているだけで呼吸が苦しくなるようだった。

「いいよ。千絵の気が済むまで冷たくしてくれて。それくらい、待てるから。で、その後でまた付き合えばいい話じゃん。大丈夫だって。時間は空いたけど、俺と千絵ならまた元通り仲良くやれるから。楽しかっただろ? 付き合ってた頃」

「……や、めて」
「言っておくけど、千絵の気持ちが落ち着くまで待ってくれる男なんか、俺くらいしかいないから。だっておまえ、あれから何年経ったと思ってるんだよ。たった一回の浮気で何年喧嘩してるつもり? 誰に言っても呆れられるような話だってわかってるか?」

ドクン、とひと際大きく鳴った心臓の音をきっかけに、呼吸の速度が変わったことに気づく。

言い返しちゃダメだ。感情的になっちゃダメだ。そう思うのに、一度スピードをあげた胸は落ち着いてくれない。

「そもそも、あれは浮気じゃないんだよ。もう何度も言ったけど、仕事上、仕方なくだった。俺は、一度だって千絵を心で裏切ったことはない。別れてから再会するまでの間だって、俺は千絵より好きなヤツなんかできなかった。昔も今も、ずっと千絵だけなんだよ。だから……必要なら何度でも謝るから」

「やめて……もう、いいから」
「よくないだろ。……俺は、全然よくない」

眉を寄せ、懇願するみたいな顔で私を見る瀬良さんが、ゆらゆらと揺れる。瀬良さんだけじゃなく、周りの建物も揺れて見えた。