恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



「こういうのって?」
「挑発とか、喧嘩腰の会話。私とはもう、ただの同僚としての上辺の会話をすればいいのに、わざわざつっかかってきて……瀬良さんだってこんなの疲れるでしょ」

瀬良さんは得意なはずだ。
軽い会話も、周りの雰囲気に合わせるのも、私よりもずっと上手だ。だからこそ、周りに合わせすぎて疲れちゃうひとなんだから。

そんな瀬良さんが、私に特別に見せてくれるわがままなところが好きだった。でも、それは付き合っていた頃の話だ。

もう別れているのに、未だに私にこんな態度をとるのはおかしい。
一度付き合って別れたせいで、もう、私たちはただの幼馴染にはなれない。だから、別れた今、ただの同僚として接するのは当たり前なのに、瀬良さんはいつまで経ってもそうしてくれない。

「私の、触れて欲しくないところに触れて、わざと揺すぶって……瀬良さんはそれを楽しむようなひとじゃないことは知ってる。だから、やめようって……お互いに開放されたほうがいいって言ってる」

感情的にならないようにと意識しながら話す。

『無理して抑えつける必要はない。でも、感情の昂りに比例して過呼吸を起こす可能性が高まることは頭においておいたほうがいい』

前、過呼吸を起こしたあと、北川さんが言った言葉を思い出し、気持ちを落ち着かせる。

考えてみれば、瀬良さんと話すとき、私はいつも感情的だったし色々なものに過敏すぎた。
自分がもうこれ以上傷つけられないようにとそればかりに必死で、瀬良さんの言葉を、素直に受け取れていなかったのかもしれない。

喧嘩腰と、今瀬良さんに言ってしまったけれど、それはきっと私も同じだった。