恋は、二度目のキスのあとで―エリートな彼との秘密の関係―



〝声かけてみようよ〟的な会話が聞こえてきそうだ……と、そこまで考えてから、〝モデルみたいな人〟が誰だか気づいてハッとした。
同時に、サッと血の気が引いていく。

「き、北川さん……」

駅の噴水前に立つ北川さんを見てから、待ち合わせをしていたことを思い出した。
〝十九時半に駅前で〟とメッセージが入ったのは今日の午前中。噴水の隣に立つ時計を確認すると、時間は十九時五十分。

忘れていたにしては奇跡的に二十分の遅刻ですんだものの、遅刻は遅刻だ。忘れていたため、遅れるという連絡ももちろん入れていない。

待っている北川さんからしたら二十分は長い……し、それに、北川さんはきちんとしているから時間厳守にはうるさそうだ。

これはきっと気分を害してしまったに違いない、と慌てて北川さんに駆け寄った。

「すみません!」

近づき、目が合うなり頭を下げる。
周りにはたくさんの人がいるけれど、そんなの気にせず90度の角度で頭を下げたまま謝る。

「なんの連絡も入れず遅刻してしまって、すみませんでした! その、言い訳になりますが、色々あってうっかり約束を忘れてしまっていて……本当にすみませんっ」

そこそこの声量だったからか、通行人にも聞こえていたようでひそひそ声が聞こえてくる。

「なに? 取引先との約束に遅れたってこと?」というような会話が何か所かでされているのがわかり、視線を集めていることに気づいて頭を上げた。

「す、すみませんっ、私のせいでおかしな目立ち方しちゃってますよね」

謝りたかったのに、これでは北川さんにまたしても迷惑をかけてしまう。
だから「すみません!」と再度言うと、北川さんは私をじっと見たあとでおかしそうに笑いだす。

「え、あの……?」
「いや、悪い……白石があまりに必死だから、つい」
「必死ですよ……だって、北川さんを待たせてしまいましたし」

話している間も、クックと楽しそうに笑う北川さんをまじまじと見てしまう。
だって、この人がこんなに笑うのは珍しい。

女性社員からしたら激レアショットなんだろうなぁと思いながら、気を取り直して口を開く。