メリーゴーランドは空席

306号室。
「横峯」と書かれた表札。

インターホンを押した。
「はい」
幸人くんのお母さんの声。

「あの、越野です。プリントとか、持ってきました」
「ちょっと待っててね」

玄関のドアが開き、幸人くんのお母さんが
「いつもありがとうね」
と家の中に入れてくれた。


「あの、幸人くんにプリントと授業のノート……」
そう言って学校指定のスクールバッグからファイルに挟んだプリントとノートを取り出す。


「ちょっと待ってて、幸人!幸人ー!」
幸人くんのお母さんは大声で幸人くんを呼ぶ。
「今ね、おばさん何かお菓子でも食べようかなって思ってたから、一緒に食べない?」
「あの、おかまいなく……」
慌てて答えたものの、玄関からリビングのほうへ案内されたので、リビングのソファーの前で立って幸人くんを待つ。