メリーゴーランドは空席

「はぐれないように、オレの服掴んでて」
「えっ、う、うん……」
Tシャツの裾を掴んでみる。

好きな男の子の服の裾をちょっと掴むくらいで、私の心臓ときたらドキドキドキドキうるさい。


「人、多いから離れんなよ」
「離れんなよ」なんて言われて、顔が赤くなってくる。


幸人くんは神社内をウロウロして、たい焼きの出店の隣のベンチの前で立ち止まった。
「あんまり人いないから、花火も見えにくいかもだけど」
「いい。人混みの中より楽だよ」
私のことを気遣ってくれたことがわかって、嬉しくなる。
もしかしたら幸人くんは人混みの中でも花火をちゃんと見たかったかもしれないのに、私がつらくならないように考えてくれたんだろうなぁ。
「そっか、良かった」
幸人くんは満面の笑みで空を見た。