私は慌てて、
「そんなの幸人くんに悪いよ」
と言う。
「なんで?オレは全然大丈夫だけど。葵はイヤ?」
「イヤじゃ……ないけど」
「よし、決まりね」
幸人くんはまたアイスにかぶりつき、おいしそうに食べている。

そこまでしてもらって悪いよ……。

そう思うのに、心の中では夏休みへの恐怖が(やわ)らいでいた。


「何曜日に会う?」
楽しそうな声で幸人くんが言う。


『大事な友達なんだ』


テスト勉強の時に、幸人くんが言ってくれた言葉を思い出す。
「私もそう思ってるよ」
小さく呟いた言葉を、幸人くんは知らないまま歩いていく。


スッキリと晴れた空。
雲がひとつもなくて、見渡す限りに青色が広がっていた。