花はいつなんどきも美しく

ママは私の頭に手を置いた。


その温もりが全身に伝わったようで、私は恥ずかしくなって思わずその手から逃げる。


ママは驚き、目を見開いている。
だけど、すぐに作り笑いを見せた。


「触られたくないわよね」


ママは厨房に戻った。


しまった。
意識しすぎて、ママを傷つけた。


だけど、何を言えばいいのかわからない。


「聡美、ママと喧嘩でもしたのか？」


愛子に開放された真司が、自分のグラスを持って隣に来た。
隣で容赦なく言ってきていた愛子は酔い潰れ、うつ伏せになって寝ている。


「……喧嘩はしてない」
「じゃあなんで、あんなに気まずそうにしてたんだよ」


……言えるわけない。


私は黙ってビールを飲み干す。


「とりあえず、男に捨てられたことを引きずってるわけじゃないんだな」
「それはとっくの昔にどうでもよくなった」
「そっか」


真司は安心したように笑う。


「早く復活しろよ？元気じゃねえ聡美はつまらないからな」
「元気だっつーの」


拗ねたように答えると、真司は片方の口角を上げた。
その顔が気に入らなくて、私はそっぽを向いた。


「聡美ちゃん、おかわりいる？」


ジョッキが空になると、ママが声をかけてきた。


「ううん、やめとく。ごちそうさま」


代金を机に置き、店をあとにした。