結局私は、一度家に送ってもらい、着替えを鞄に積めて土日も渡瀬課長の家で過ごした。

一緒にご飯を食べて、一緒にテレビを見て、お互いのことを話した。

キスは、たくさんした。

でも、夜はただ優しく私を抱き締めて、同じベットで眠りについた。

自分のことを知ってほしいと笑う、課長の顔にドキリとする。

「二人の時は名前で呼んで」

「慎太郎さん…」

「さんはいらない。
呼びにくいなら慎でいい。

あすか…呼んで」

「慎…」
「ん」

嬉しそうに笑う慎を見て、誰かと過ごすことの心地良さを噛み締める。

一人で週末を過ごしたら、きっと私はひたすら泣き続けていたのだろう。

「ありがとう」

そう呟いて温かな腕の中で眠りにつく。

ほんの一時でも、悲しさを忘れさせてくれているこの温もりに、私は甘え思考を停止させた。

彼のことを考えないように慎の優しさに身を任せた。