ガラガラ……っと音を立ててドアを開けると、いつも通りクラスの皆が騒いでいた。
私は小学生みたいに教室で鬼ごっこをしている男子を上手く避けながら、席につく。
肩から下ろした鞄から、読みかけの小説を取り出した。
朝の準備は、これといって少ない。
教卓にノートを置いておかなければならない時もあるが、今日は平気だった。
本のページに挟んでいる栞を取り出すと、握ったまま文字を読んでいく。
最近、本屋で買った推理小説。
続編がまたあるんだけど、これが面白かったらまた買いたいな。
本を読んでいる時は、自分だけの世界に入ることが出来る。
周りの音が小さく聞こえて、先生が教室に入ってきた音さえも分からなくなってしまうのだ。
しばらくして、朝の会が始まった。
先生の話を聞き終えて、授業が始まる。
「この間やったテストを返すわよー」
あ、そっか。
テストがまだ返ってきてなかったんだ。
本を閉じて、机の中にしまう。
自分の名前が呼ばれると、教卓の前にいる担任の先生のそばに行った。
「福井さん、また点数あがったわね。この調子で受験頑張ってね」
テスト用紙を返される時、先生に言われて少し会釈した。
チラッとテストを開いて点数を見ると、『98』と書かれている。
やっぱり、理科は一度得意な教科だ。
自分の席について、本を読もうと机の中から小説を取り出した時だった。
「今回のテストはかなり難しかったわねー。だけど、福井さんはやっぱりすごいわ!98点よ!」
「…っ」
どうして?
そんなこと言う必要ないよ。
周りはこそこそと友達同士で話し出す。
「…やっぱり天才は違うよね」
「可愛いくせに頭も良いとか、調子乗ってね?」
「いいなー、完璧で。頭も良いし美人とか」
「98点でしょ?100点じゃなきゃ完璧って言わないんだよ」
「あーそっかぁ!(笑)」
耳が敏感な私に、会話の内容が聞こえてくる。
授業を聞いて、テスト期間にはきちんと復習して。
好きな勉強をして、ここまで点数を取ったのはわざとじゃない。
それの、なにがいけないの?
ぎゅっと本を握りしめ、逃げるようにページを開いた。