「いや、単に、紳士なんですよね、羽村さんは」
と真湖がフォローを入れると、雅喜が、

 紳士がお前にいきなりキスしてくるのかっ、と目で訴えかけてくる。

 ……いや、私はこの二人を上手くまとめたいだけなんですが、と思いながら、真湖は、雪乃に笑って言った。

「羽村さんって、そんなに悪い人じゃないですよ。

 そんなに立ち回りうまくもない。

 ……そうだ。

 よく考えたら、羽村さんって、誰ともうまくいってないですよね」

 前の彼女も結局、三上さんに取られたわけだしな、と思っていると、古傷をえぐられた羽村が渋い顔で、

「ちょっと真湖りん……」
と言ってくる。

「ああっ、すみませんっ。
 フォローを入れたつもりがっ!」
と叫ぶ真湖の隣で、雅喜が、

「フォローどころか、地べたに叩きつけてるな」
と羽村に多少の同情を見せ、呟いていた。