そう、契約。おかげでしばらく見合いの話は出なかったが、『彼女とは別れた』と告げたときの親父の落ち込みようったらなかったな。
たしかにもう三十一。いい加減、親を安心させてやらなければいけないのかもしれない。
だが、見合いってのもなんだかピンとこない。別に運命の相手と出会うまで待つとか、そんなロマンティックなことを期待しているわけではないのだが。
大体今まで付き合った中で、一生一緒にいられそうと思うくらいぴたりと合う人に出会ったことはないし……。
「佑さん、少し控えます? 私、飲ませすぎましたかね」
野乃が小首をかしげて俺を見ている。彼女には俺が酔っているように見えるのか。
たしかにいつもよりふわふわした感覚だ。野乃が、ものすごく可愛く見える。他の女の子など、目じゃないほど。
だが俺はロリコンじゃ……。
何度目かのその思考の後、ハタと気づいた。
「……野乃ちゃん、いくつになったんだっけ」
「私? 二十三です」
「そうか。そうだよね。もう大人だよね」
八歳という年齢差にばかり気を取られていたが、俺が年を食っただけ、野乃だって大人になるんだ。
今の野乃と歩いていて、誰が俺をロリコンだと思う?
いるじゃないか、誰といるよりリラックスできて、話していても楽しい、かわいい女の子が。
「野乃ちゃん、連絡先交換してくれないかな。頼みがあるんだ」
「はっ?」
顔を赤くする彼女に、ワクワクするような気持ちが沸き上がる。
認めてしまえば、胸につかえていたものは霧散した。
適材適所。昔俺が感じたように、きっと彼女の向いてる場所は俺の隣。
そして俺にとっても、一番自分らしく居られる場所は、きっと彼女の隣なんだ。
【Fin.】



