「たすくにいちゃん……」

途方に暮れたように見上げられれば、放っておけるはずもなく、仕方なく、彼女の面倒は俺が見ることになる。

「野乃ちゃん、俺の仕事を手伝ってくれる?」

「うん!」

意外にも傍に置いてみれば、彼女は非常に役に立った。
彼女が懐いていることで、地元の小学校に通わない俺に対しての周りのみんなの警戒心は薄れるし、ちょっと持っていてほしい、ちょっと押さえていてほしいという、誰かに頼むにはあまりに些細すぎる願いを、野乃は真剣に取り組んでくれた。

「ありがとな」

「へへー!」

その、警戒心の全くない満面の笑顔。その顔に、俺はご褒美をもらったような気分になった。
采配を振るう方にとって、なにより欲しいものは協力者や参加者の笑顔だ。野乃がいると、俺のモチベーションが保たれる。
そのとき、俺は思った。彼女に一番向いている場所は、俺の隣なのだと。

小学校を卒業してからは、隣の姉妹とも疎遠になる。それでも俺はなんとなく、野乃を妹分として大事にしていた。道端で会えば必ず話すし、野乃が転んでるのを見かければ、家までおんぶしてやった。そのたびに野乃はとびきりの笑顔で笑うから、俺は野乃がかわいくて仕方なかったのだ。

その野乃をなんとなく意識してしまったのは、十六歳のときの塩コショウおにぎりのときで。
いや、弁明するならば、あれはどちらかと言えば腹をすかしている人間におにぎりを作ってあげようという母親的発想にときめいたのだ。きっとそう、絶対そう。
だって俺は断じてロリコンではないのだから。