隣家の姉妹は幼馴染とはいえ、学校が違ったこともあり、付かず離れずの距離の、まるで親戚のような間柄だった。
会えば話すし楽しく過ごす、けれども敢えて会う約束なんかはしない。そんな感じだ。

うちの父親は製菓会社の社長であり、地域貢献(特に子供が関わる行事への参加)にうるさかったため、町内会の行事には必ず参加させられた。
地区の中では、河東谷(かとうだに)家は立派なお家柄という意識があり、高学年にもなればなんとなくリーダーは俺がやるような雰囲気が出来上がっていた。
学校が違う子供たちをまとめていくのは難しかったが、そこはそこ、自分には人たらしの才能があったのだと思う。
にこやかに穏やかにやるべきことを指示していく。どこにでも盛り上げ役となる人材はいるもので、調子のいい男子には簡単な仕事を与え、その成果を持ち上げてやれば、面白いほど簡単にやる気を出してくれた。
大人しい女子は、あまり動かないで済む単調な仕事を好み、溌溂とした女子たちは、飾りつけや大人への協力要請などが向いている。
適材適所を心がければ、おのずと人は付いて来るものだ。

その中でひとり。姉に連れられてきたまだ未就学児だった野乃は、一番扱いが難しい子供だった。

男子の中に入れれば泣かされて戻ってくるし、おとなしい女子の中に置けば、退屈そうにどこかに行ってしまい、騒がしい女子たちからは面倒くさがられていた。彼女の姉である香乃もほったらかしだ。あいつは姉としてどうにも責任感が欠けている。