◇
「そーいやお前さ、」
「うん?」
恭と付き合うことになって、しばらく経った。
今日は雨だから室内で、お昼ご飯を食べながら恭がふと思い出したように話しかけて来る。
「なんでその色にしたんだよ」
「……ピンクにしたかったから?」
主語のない問い掛けだったけれど、恭の視線がわたしの髪に向いていたから、何のことなのかは言われなくてもわかる。
既に数回色を抜いて染め直した髪は、はじめて染めた時よりも圧倒的に目立つピンク色をしていた。
ド派手なショッキングピンク。
はじめから目立っていたことに変わりはないんだけど、個人的にとても気に入っている。
「そもそも、髪じゃなくても良かっただろ。
テキトーなこと言ったけど、校則なんていくらでも破る方法あるってのに」
「うん。だから、わたしがただ染めたかったの」
「………」
「恭と出会ってなくても、
いつかはこの髪色やりたいなぁって思ってたから」
ちょうど良かった、と笑ってみせる。
そうすれば恭の手が伸びてきて、髪をもてあそぶみたいにくるくると指に巻き付け始めた。
「……ずるいよな」
至近距離で髪に触れられて、呼吸が止まる。
自分からあんなに好きって言っておいてなんだけど、いろんなことにドキドキしてしまう。