玄関のほうから私の名前を呼ぶ三門さんの声がした。足音が近付いてくる。


 「麻ちゃん!?」


 額に汗を浮かべた三門さんが部屋へ飛び込んできて、私の前に跪く。気を失う詩子の首に手をやって安心したように小さく息を吐いた三門さん。私と目を合わせるよ「よくやったね」と微笑んだ。

 その瞬間、体の力が一気に抜けていくような感覚に襲われた。


 終わったんだ。私、ちゃんとできたんだ。


 胸に熱いものがこみ上げて、ぼろぼろと涙が零れた。嬉しいのと、安心したのと、とても怖かったのが一気にあふれ出した。三門さんが白衣の袖で私の頬を拭う。大きな手が頭に乗せられて、もっと涙が溢れた。