「どこを見ておる、下じゃ下」
声の通りに視線を下げる。ひ、と息が止まった。
一定の驚きのレベルを超えると、声も出なくなるらしい。たらりと冷や汗が背筋を流れるのを感じた。まっすぐ前を見つめていたはずのふっくらした白い顔が、私をじっと見上げていた。線のような細い目でこちらを窺っている。
「しゃべ、喋ってる、人形っ」
「ほらーっ、私言ったでしょ?」
女の子は得意げに胸を張る。子どもたちが興味津々に私の周りに集まってきた。
「おやおや、付喪神になりかけているんだね」
飾り付けをしていたババが手を止めて、歩み寄りながらそう言った。
聞いたことのある名前がでてきた。眉間に皺を寄せて記憶をたどる。
「あ……円禾丸」
お正月に宝物殿で出会った刀の付喪神のことを思い出す。篠に怒られて落ち込んんでいたときに、励ましてくれたのは彼だった。その時に、付喪神についても教えてもらったんだった。
彼の名前を口にすると、ババは目を丸くした。

