「そして、私にとって、家族と言える存在は、あなたと2人の子供達しかいないんだって。思い知った、ううん、再確認したって言うべきかな。」


「・・・。」


「だって、それは最初からわかってたこと。本当は出て行きたくなかったんだもん、離婚届なんか書きたくなかったんだもん。だけど・・・。」


そこで言葉を切った私を隆司さんは、少し見つめていたけど、おもむろに口を開いた。


「だけど・・・なんだよな、結局。」


「隆司さん・・・。」


「朱美。」


「はい。」


「俺はさっき『来てくれて、ありがとう』って言った。でも、本当はこう言いたかった。『帰って来てくれてありがとう』って。」


その言葉に、私はハッとする。


「朱美、このひと月、いや、お互いの過ちと裏切りがわかってから、ずっと考えて来た。離婚という、1つの重い決断をしたあとも、ずっと。そして思った。朱美に帰って来て欲しいって。もう一度、俺と一緒の人生を歩んで欲しい。君が隣にいない人生なんか、俺にはやっぱり考えられないって。だからその為に、もう一度、一からやり直そうと、彼氏彼女からやり直そうと思った。だけど・・・。」


ここで少し沈黙が流れる。そして躊躇ったあと、隆司さんはまた口を開く。


「だけど、俺達は1ヶ月前に思い知った。お互いをやっぱりもう信じることが出来なくなってしまっているという現実を。」


「・・・。」


「それでも、元通りに、また一緒に暮らして行けると思うか?」


そう言って、苦しげな表情を浮かべて、私を見つめる隆司さん。そんな彼の顔を見返した私は


「それが間違ってたんだよ!」


と強い口調で言った。


「えっ?」


「私達は、そこを間違えてたんだよ。」


「朱美・・・。」


そんなことを言った私の顔を、隆司さんは驚いたように見た。