「このままで料理に使えばいいのに」
「こんなスースーするもん、料理には向かないでしょう。苦みもあるし」
「そんなことないわ。このほかの調味料と合わせればいいのよ。生姜焼きとか最高においしいんだから」
でもそれには醤油がいるな。
ああもう! 早く醤油を入手したい。
「なんですかな、そのなんたら焼って言うのは」
ジョナスは聞いたことのない料理名に興味を示しだした。
「ショウガとしょうゆを混ぜた調味料でお肉を味付けしたものよ。うーんでも今はつくれないな。……そうだ、クッキーとかどうかな」
「こんなもんでクッキー? いやいや、奥様。それはどうかな」
ジョナスは呆れ顔だ。
実際、この世界で出てくるお菓子は、ただひたすらに甘い。
日本にいたとき、外国製のチョコレートや焼き菓子が甘すぎて胸やけしたことがあるのだけど、あれに似ている。
ジンジャークッキーなら、甘いものが苦手と言っていたアーレスにも喜んでもらえるかもしれない。
「小麦粉はある。卵もバターもあるよね。あとは砂糖。そしてショウガ」
この世界ではおそらく、ショウガが薬として認知されてしまったので、食べ物としての発展を遂げなかったのだろう。
基本的に気候は温暖で日本とそう変わりないし、実際に多少名前が違うだけで同じような作物はたくさんある。日本にあった作物はたいていあると考えてもよさそうだ。考え方の基本は、広がり方が違うものもある、ということだ。



