いずみは内心落ち込んだまま、テレビカメラに向かって笑顔を作る亜由美を見つめていた。
その胸の内には、いけないと思っても仄暗い想いが浮かんでくる。

(もし私があそこに立てたら……)

亜由美のレシピは、いずみが最初に考えたレシピをアレンジしたものが多い。紹介内容だけで考えれば、自分があっちに立っていたっておかしくはないのだ。

(先生がいなければ、もしかしたらそこにいたのは……私かもしれない……)

そこまで考えて、我に返る。そしてモニターに映る彼女を見つめて、首を振る。

もしかしたら……なんていうのは、傲慢な考えだ。
もし亜由美がいなくても、いずみに才能があるならいまそこに立てているはずなのだから。
テレビに映るか映らないか分からないような陰で、サポートしかできないのは、それだけの力しか自分にないからだ。

「ではこちらが出来上がったものです」

亜由美が先ほど盛りつけ直したお皿が、テレビ画面いっぱいに映される。

(今日の撮影はこれで終わりだ。今度は速やかに片付けなくちゃ……)

いずみは嫌な考えを押し出すように頭を振って、立ち上がった。――そのときだ。


「あ、危ないっ」

「え?」

叫び声と同時に、スタジオの端から悲鳴が聞こえる。ぱっと上を向いた瞬間、ライトが自分に向かって落ちてくるのが見えた。――見えているのに、足がすくんでいずみは動けなかった。

重い衝撃を感じるのとともに、光が視界いっぱいに広がり、あたりからは何も見えなくなった。
泥の中に沈んでいくような感覚。いずみは目を閉じてこれまでの人生を思い起こした。