「今更結婚! しかも相手は召喚聖女? 候補者三人のうちのひとりだと?」

伝令を持ってきた従者は、アーレスの剣幕にすっかり腰が引けている。気の毒に思うが、こっちも苛立ちが止められない。

「そ、その通りでございます!」

「何を考えているんだ、陛下は。そもそも、なぜ聖女の召喚なんてしたんだ! それに、聖女を娶るのなら、もっと若い、ふさわしい相手がいるだろう。例えば陛下自らが……」

「あ、でも、聖女もそこそこのお年であります。二十六歳とか……。それで、他の候補者たちも再婚だったり年配だったりしているようです」

年齢を聞いて、アーレスはひそかに納得する。
二十六歳なら、二十一歳の王が自らの妻に迎えるには、歳をとりすぎている。
だから重臣の誰かに押し付けようと思ったのだろうが、二十六歳と釣り合いの取れるような人間は皆結婚している。
この国の平均結婚年齢は二十二歳だ。女性はもっと早く十八歳。それを考えると、相当の行き遅れであると言えよう。

「つまり、そもそも候補者自体が少ないということだな。それで、すでに忘れ去られたような俺にお鉢が回ってきたということなんだな」

「さすがアーレス様! お察しのとおりです」

そんなことで褒められても嬉しくもなんともない。

(理由はわかったが、聖女にだって選ぶ権利はあるだろう。会ったこともない、十歳も上の人間の嫁になるなど、気の毒ではないか)