「そのお三方の中から私が選ぶんですか?」

「もちろん、相手の意向も考慮される」

(ですよねー。選びたい放題なんておいしいことにはなるはずがない)

「分かりました」

「ドレス捌きもちゃんと学んでおくようにな」

年下の王様から心配されるようなことでもないと思ったが、実際にドレス捌きは苦手だ。
何せ、日本で着たことのないドレス。お姫様みたいで素敵という印象しかなかったが、予想以上に重い。

(ずっしりした暗幕抱えているみたいな状態で、優雅に踊ったりお話したりできる令嬢、本当尊敬します)

「そもそもイズミは基礎体力が足りないんだ。そんなんでは結婚してから体がもたないぞ」

「……どうしてですか?」

貴族の奥方になるなら、家事だって使用人がやるはずだ。実際、城にいる間、いずみは家事らしいことは何ひとつやらされていない。ランプをつけるのでさえ、魔力を操れないためにメイドにやってもらっている始末だ。

「新婚のうちは寝かせてもらえないのが常だ。子供ができる前に倒れてしまうぞ」

そういう意味か、と悟った瞬間、いずみの顔に血が上ってくる。

「下世話ですよ、オスカー様」

「ははは。年の割に純情だな。イズミは」

(オスカー様こそ、年の割にセクハラ親父みたいだよ)

いずみはぷんすか怒りながら部屋を出て、それでも素直に筋トレを始めた。
決して初夜を乗り切るためではない。ドレス捌きにはたしかに筋力が必要かもしれないと思ったからだ。