*
「裏口からこっそり入りましょう。証拠の場面を押さえないと」
なぜか楽しそうなフレデリックに連れられて、いずみは騎士団本部へと足を踏み入れる。彼の進言に従って、頭にはフードをかぶっていた。何せこの黒髪が見つかると、すぐに団長の妻が来たとバレてしまう。
「ちょっとフレデリック。ホントにイズミ様を連れてきたの?」
呆れた声を出すのはエイダだ。
「エイダ。……本当なの? その……旦那様に」
「女性がいらしているのは本当です。でもどのような要件かまでは……」
「……まだいらっしゃるの?」
フレデリックが来てすぐ屋敷を出てきたとはいえ、三十分は過ぎている。アーレスが女性とふたりきりでそんなに長い時間いることなど、あるだろうか。
「正確には一時間はふたりきりで部屋にこもっていますよ。これはもしかするともしかする……」
「わけないでしょ! フレデリックと団長は違うんだから!」
エイダのお叱りが飛んできて、いずみも苦笑するしかない。……が、たしかに疑う余地もないわけじゃない。
「……一時間たったということは、フレデリックさんの休憩時間も終わりじゃないんですか。あなたは仕事に戻ってください」
「えええ! ここまで来てそれは酷い!」
「酷くなどありません」
そこへ、大きなカバンを持った女性が通りかかる。服装を見れば下働きの女性のようだが、品のいい笑顔を浮かべていた。
「あ、あの人ですよ」
「……あの人?」
とてもきれいな人だ。一瞬、胸がザワリとさざめく。彼女はいずみにふと目をやると、余裕の顔でほほ笑んで頭を下げた。
反射的に、いずみは団長室へと向かった。
「裏口からこっそり入りましょう。証拠の場面を押さえないと」
なぜか楽しそうなフレデリックに連れられて、いずみは騎士団本部へと足を踏み入れる。彼の進言に従って、頭にはフードをかぶっていた。何せこの黒髪が見つかると、すぐに団長の妻が来たとバレてしまう。
「ちょっとフレデリック。ホントにイズミ様を連れてきたの?」
呆れた声を出すのはエイダだ。
「エイダ。……本当なの? その……旦那様に」
「女性がいらしているのは本当です。でもどのような要件かまでは……」
「……まだいらっしゃるの?」
フレデリックが来てすぐ屋敷を出てきたとはいえ、三十分は過ぎている。アーレスが女性とふたりきりでそんなに長い時間いることなど、あるだろうか。
「正確には一時間はふたりきりで部屋にこもっていますよ。これはもしかするともしかする……」
「わけないでしょ! フレデリックと団長は違うんだから!」
エイダのお叱りが飛んできて、いずみも苦笑するしかない。……が、たしかに疑う余地もないわけじゃない。
「……一時間たったということは、フレデリックさんの休憩時間も終わりじゃないんですか。あなたは仕事に戻ってください」
「えええ! ここまで来てそれは酷い!」
「酷くなどありません」
そこへ、大きなカバンを持った女性が通りかかる。服装を見れば下働きの女性のようだが、品のいい笑顔を浮かべていた。
「あ、あの人ですよ」
「……あの人?」
とてもきれいな人だ。一瞬、胸がザワリとさざめく。彼女はいずみにふと目をやると、余裕の顔でほほ笑んで頭を下げた。
反射的に、いずみは団長室へと向かった。



