「お待たせいたしました、聖女様。オスカー様がお待ちでございます」
オスカー王は今日は玉座にいる。脇を側近たちが固めており、イズミはアーレスに習って最敬礼を取る。
挨拶を終えた後はすぐさま厨房を借り、料理を始めた。
今日のメニューはアーレスから最も評判のいい、生姜焼きだ。それとしょうゆベースのドレッシングを加えた生野菜のサラダ。ご飯にお味噌汁、そして白米だ。
毒見の若者が、一口頬張り、はっと息を飲む。その口もとに笑みが浮かんだのをいずみは見逃さなかった。
時間のかかる毒見を、オスカーは待ちきれない様子で見つめていた。
「もういいだろう。イズミが私を害するはずがないのだから。せっかくの料理が冷めてしまうではないか」
「そうは参りません」
頑なな毒見係からようやく許可が出ると、オスカーはうきうきとそれを食べ始める。
「ほう、変わった味だな。だがうまい。醤油のこの感じ……なんというのかな」
「香ばしい……ですかね」
「そう、そんな感じだな。それがうまい。味噌汁もうまいな。ミヤ様が昔食べさせてくれたのはこんな味じゃなかった」
「おそらくはダシがとれていないせいでしょうかね。手近なところでキノコ類やゴボウとか……できれば小魚や海藻でダシを取れば深みのある味になります」
「すごいな、そなた、料理の才能があったのだな」
「では……」
「いいだろう。まずは小規模にだがコメを作る畑を作らせよう。この料理が広がるようなら、規模を増やしてもいい」
「ありがとうございます!」



