聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

そんな中、オスカー王から和食を作るようにとの命令が届いた。
世間話のついでにした、和食の話を彼は忘れてはいなかったようだ。

とはいえ、国王に一伯爵家にお越しいただくわけにもいかないので、城の調理場を借りて作ることになる。
いずみひとりでは調理ができないのでジョナスと一緒に行くのだ。

約束の日まで、いずみはジョナスとともにメニューを考えた。
その結果、作るのは白米とお味噌汁。生姜焼きとサラダとなった。飲み物として、ジンジャーエールもつける。

「頑張ろうね、ジョナス!」

「もちろんでさぁ」

張り切って準備万端整える。
その日は、アーレスも休みを取って一緒に来てくれるというのでますます心強さを感じた。



いよいよ和食づくりの日。
いずみはアーレスとジョナスの三人で城へと赴いた。

「へぇ、俺、城に入るのは初めてです」

「その割には緊張感が感じられないな、お前は」

「度胸があるのはジョナスさんのいいところですよ。心強いです」

いずみに褒められ、ジョナスも悪い気はしないらしい。得意げに胸を反らすと、嫉妬深い主人ににらまれる。

「旦那様は、奥さまに関してだけは心が狭すぎですよ」

「うるさいな。お前ばかりが頼りにされるのは気に入らない」

いずみとしては、アーレスが守る家の中にジョナスも入っているのだから、守られてる仲間の気分なのだが、それをアーレスに言ってもなかなか通じない。