聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~


「ええ、もちろん。……ところで、イズミ様、最近、アーレス様との仲はどうですか?」

「やめなさいよ、フレデリック」

ポロリとこぼしたフレデリックを、たしなめるようにエイダが叱る。その様子が少し不思議に思えた。

「……順調だけど、なに?」

「いや、先日、騎士団に団長に用があると言って女性が訪ねてきたんです。そんなこと珍しいから、俺、ちょっと気になっちゃって」

何せ、団長とイズミ様は俺の理想ですから、と続けるフレデリックも、少しばかり疑いを持っているようだった。

(……女性?)

たしかに胸がざわつく案件だ。
だけど、アーレスとの仲は今は順調すぎるほど順調だ。
アーレスはベッドに入ると浴びるほどの愛の言葉をささやいてくる。普段口下手なくせに、そういうところだけは上手なのはなんなのか。さすがはグレイス様の弟と思えばいいのか。

「でもアーレス様が浮気をするとは考えられないので、お仕事じゃないんですか」

「そうよ。あの団長様がそんなことするわけないでしょう。あんたじゃあるまいし」

「だよなぁ……。でも俺たちの仕事で女性が来ることなんてほとんどないんだよなぁ」

叱られているというのにフレデリックには大して堪えた様子がない。

「心配してくれてありがとう。でもきっと大丈夫です」

イズミが笑って言うと、エイダが気を使ってくれたのか話題を変えてくれた。

「ねぇ。イズミ様。私もね、新しいレシピを考えてみたんです」

「へぇ。聞かせて?」

エイダとは一緒にレシピ考案を、フレデリックからは騎士団の情報をといずみの毎日は充実しつつある。