とさり、とベッドに倒されて、いずみは思わず「へっ?」と声を上げた。

「あの、アーレス様?」

「駄目だ。我慢がきかない。イズミが欲しい」

繰り返されるキスはやがてその位置をずらしていく。夜着の上から撫でてくる手に、いずみも身をよじった。

「あの、でも、怪我、怪我がまだ完治していないのに」

「ここまでくればもう治ったようなものだ」

体を押し返してくるいずみの力は可愛いものだ。本気で嫌ならもっと力を込めてほしい。でないと止まれそうもない。

「……嫌か?」

それでも、無理強いをするのは避けたい。高まり切った欲求を、持ち前の鋼鉄の理性で一度は押し込め、息も絶え絶えになって聞く。

いずみは真っ赤な顔でアーレスを見て、その後恥ずかしそうに目をそらした。

「嫌じゃ、ないです」

無意識にホッと息が出た。アーレスは自分が珍しく緊張していたのだと知る。

「ただ、初めてなので、うまくできないかも……」

(可愛すぎるぞ。殺す気か……)

アーレスの理性は、珍しく衝動に負けた。

「うまいとか下手とか関係ないだろう。こういうのは男の仕事だ」

「あんっ」

アーレスはもう一度、今度は優しくキスをする。そして、ゆっくりと、全身に大きな手を滑らせる。
どこを触っても柔らかい彼女の体と、甘えるような声に、正気を持っていかれそうになりながらも、アーレスはなんとか獣の衝動を抑えた。

(イズミを傷つけないような力だ。落ち着け、俺)

祈りの文句のように唱えながらも、やがて性の営みへと没頭していく。

「あ、ああっ、アーレス様ぁ」

掠れたようないずみの声。痛みにしかめる顔も、なにもかもが可愛らしい。

「愛している、イズミ」

これが愛だと、アーレスは心の底から理解した。
心も、体も、これ以上ないほど満たされる。なのに、もっともっとと欲求は尽きない。
無欲にもどん欲にもなれるもの。それが愛だ。

いずみの柔らかい肌に、自分の証を刻み付けていく。この夜を、一生忘れないとアーレスは思った。
そして叶うなら、彼女にもずっと覚えていてほしいと、柄にもないことを考えたのだ。