体のほてりはいつまでたっても消える気配はない。
しばらくは廊下をうろうろしていたが、アーレスは諦めていずみの部屋の前に立った。

「イズミ?」

ノックをしても返事はない。そっと開けてみると、いずみがベッドの上に倒れ込んでいた。

「……イズミ!」

思わず青ざめて駆け寄ったが、彼女は寝ているだけだった。上には布団もなにもかかっておらず、薄い夜着のせいで、体の線が綺麗に透けて見えていた。おそるおそる頬に触れると、眠ってからどのくらい立っているのか、ひやりと冷たかった。

「このままでは風邪をひいてしまうな」

アーレスは彼女を抱き上げ、掛け布団をめくり、彼女を横たえた。
男の本能が、その丸みを帯びた体を抱きしめたいと強烈に告げてくる。

「う……ん」

ごろりと寝返りを打ったいずみは、傍にあったアーレスの指先を掴んだ。
まるで不埒な心を見透かされた気分だった。
指を掴む力は弱いものだが、アーレスは拘束されたように動けなくなる。

「起こすわけにもいかん」

ため息をつき、彼女に布団をかぶせた。指を引き抜けば、立ち去ることもできる。
だがそれももったいないような気がした。
右手を彼女に預け、残った左手で髪を撫でる。

綺麗な艶のある黒髪だ。ミヤ様もそうだったから、彼らが住む国の人間はみんなそうなのかもしれない。
ミヤ様の色だった黒は、今やアーレスにとってはいずみの色だ。

「……俺を愛してくれないか」

眠るイズミに告げるのはずるいかもしれない。練習だ、と自分に言いきかせ、続ける。