「四日間、遠征ですか?」

「ああ。と言ってもそう遠くはないんだが。一応泊まり込みでになるな」

屋敷に戻り、いずみにそれを報告すると、彼女は少し残念そうに肩を落とした。

「……どうした?」

「あ、いえ、すみません。お仕事なのに。……新しい料理をアーレス様に食べていただけないなと思ったらちょっと残念で」

「新しい料理?」

「コメがあるならば米酢もあるだろうと思って、隣国から取り寄せてもらっているんです。届くのが来週なので。……キュウリを使った酢の物を作ろうと思っていたんですけれど、アーレス様に一番に食べていただけないなんて残念だなって」

「一番? 一番はジョナスじゃないのか?」

何せ彼女と一緒に作っているのだ。誰よりも彼女の料理を一番に口にできる。アーレスはそれがいつもいら立ちの種だったというのに。

「……ジョナスさんはつくる人ですよね? 召し上がるのはいつだってアーレス様が一番じゃありません?」

いずみの何の含みもない返しに、アーレスは顔に血が上るのを感じた。

(俺は、なんて馬鹿な嫉妬をしていたんだ)

と同時に、咄嗟に出てきた言葉で、自分が嫉妬していたことに気づく。ますます顔を赤くするアーレスに、助け舟を出したのはリドルだ。