極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 今日は朝にちょっとオフィスに行ってから、ほぼ一日銀座店で過ごしていた。

 夕方になり、裏に籠ってパソコンを開く。椅子に座って腕時計をチラ見する。
 午後五時過ぎ。

 ハンナさんへは昨日のうちにメールで連絡はしたけど……ちゃんと届いていただろうか。

 彼女に会うのは正直怖い。だけど、仕事は別だ。ちゃんとしなきゃ。

 今日何度目かの活を入れ、キーボードに手を置いたとき。

「瀬越さんっ。ちょっと来てください!」

 鬼気迫るような声が事務所に飛んできて、空気が凍りつく。
 いろんな可能性を想定し、警戒しながら売り場へ出る。

 すると、三柴さんがおろおろとして報告する。

「さ、さっきご来店されたお客様が、ボディの服を勝手に……」
「ボディの服をどうしたの? 今、そのお客様には誰かがついてるの?」
「て、店長が……。そのお客様、外国人で……急にハサミを取り出して……」
「ハサミ!?」

 緊迫した状況に、思わずごくりと喉を鳴らす。

 そろりとディスプレイ用のマネキンに近づいていく。物陰から一歩踏み出し、思い切って私が姿を晒した矢先、声が飛んできた。

「マユ!」
「ハ……ハンナさん? なにしてるんですか」

 ハンナさんは、手に裁縫用の大きいハサミを手にしている。

「え! この人、瀬越さんの知り合いですか!?」

 懸命にハンナさんを止めようとしていた店長の越前さんが、ぽかんとして言った。

「そう……。というか、この方は〝M-crash〟の新店企画に協力くださる〝アスピラスィオン社Sakura〟のデザイナー。ハンナ・シュタイナーさん」
「〝アスピラスィオン〟って……〝アヴェク・トワ〟の!?」

 後ろから小林さんと三柴さんがやってきて、驚きに声を震わせる。
 スタッフが全員固まっている横で、ハンナさんは相変わらずボディに着せた服を弄っていた。

「って、ハンナさん! なにをして……ええっ!」