極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 そこにいきなり名前を呼ばれ、反射で振り返る。

 三、四メートル先に見えるのは、八頭身はありそうなスタイルのいい男の人。
 駆け寄ってきた人の顔を見て、私は驚倒する。

「しっ、(しき)……!?」

 咄嗟に指をさしてしまった。失礼とかそういう常識も吹っ飛ぶほど、驚いた。

 私より頭ひとつ分くらい背が高い彼を凝視する。
 織は私を見て、笑顔を弾けさせた。

「ああ。織だよ」
「う、うそ……え? 本当に織なの……?」

 織――私と同い年の幼なじみ。

 五年前に留学したっきりで、顔を合わせるのはそれ以来だ。
 私は穴が開くほど織を見る。

 いつも俯きがちな男の子だった。身体の線も細くてひょろひょろとしていて……。
 五年前の印象と、がらりと変わりすぎている。

「ひどいな。たった五年で俺の顔忘れたの?」

 ……忘れてはいない。
 背や髪が伸びていたって、その透き通るようなきれいな茶色の瞳はそのままだし、笑った顔も変わってない。

 いや。それにしたって、垢抜けすぎている気もするけれど。

 織は元々スタイルはよかったのに、いつも机に向かって背を丸めている姿勢のイメージが強い。
 それが、今目の前にいる織は、堂々としていてまっすぐ立ち、自信に満ちた表情で私を見つめている。

 服装もシンプルにまとめていて、織の落ち着いた雰囲気にとてもよく似合っているし、身体つきも細身でありながら、しっかりとしているように見える。

 なんだか、私の知らない大人の男の人だ。

「俺はすぐに麻結だってわかったよ」

 織の変化と突然の再会に動揺していると、ふいに手を引っ張られた。そして、軽く身体に腕を回される。

「ただいま、麻結」

 ――『待ってて』

 胸の奥にしまっていた織の声が聞こえてくる。

 私は後ろにいる井野さんの目を一瞬忘れ、仰ぎ見た先にある柔らかな微笑みに釘付けになっていた。