「偶然にしては、ちょっと間が悪すぎだね、麻結」
「えっ……」
「今日、あそこで俺たちと遭遇しなければ、彼とふたりで食事するつもりだった? 彼が麻結に気があるって知ってて、OKしたの?」
「そ、そういうつもりじゃ……」
じりじりと距離を詰められ、動揺する。
確かに、井野さんから気持ちはすでに聞いた後だったから、それを知ったうえで誘いを受けたことにはなる。
だけど、決して井野さんへ前向きな気持ちがあったからじゃなくて……。
織のまっすぐな視線に、どこか後ろめたさを抱く。
こういう場合に、なんと説明したらいいのかわからない。
「じゃあ、ゆっくり話聞かせて」
「ちょ、ちょっと……織?」
口元は薄っすら笑みを浮かべていても、目が笑っていない。
不穏な空気の中、織は再び歩き出す。
数分後、たどり着いたのはラグジュアリーホテル。これまで、外観くらいは遠目で見たことは合ったけれど、足を踏み入れるのは初めてだ。
もしかして、織ってこんな高級ホテルに泊まってるの?
驚愕している間にも、手を引かれるまま優雅な雰囲気のロビーを抜ける。
織はあれからひとことも発していない。
今もなお無言で私の手を引き、エレベーターに乗った。
「織……もう手を離して」
初めから逃げようとは思っていなかったけれど、ふりほどくのも違う気がして、されるがままここまでついてきた。
織は私の言葉を聞き、そっと手を離す。
刹那、織の腕が耳の横に伸びてきて、トンと壁に手をついた。
照明を遮り、私の顔に鼻先を近づけて言う。
「えっ……」
「今日、あそこで俺たちと遭遇しなければ、彼とふたりで食事するつもりだった? 彼が麻結に気があるって知ってて、OKしたの?」
「そ、そういうつもりじゃ……」
じりじりと距離を詰められ、動揺する。
確かに、井野さんから気持ちはすでに聞いた後だったから、それを知ったうえで誘いを受けたことにはなる。
だけど、決して井野さんへ前向きな気持ちがあったからじゃなくて……。
織のまっすぐな視線に、どこか後ろめたさを抱く。
こういう場合に、なんと説明したらいいのかわからない。
「じゃあ、ゆっくり話聞かせて」
「ちょ、ちょっと……織?」
口元は薄っすら笑みを浮かべていても、目が笑っていない。
不穏な空気の中、織は再び歩き出す。
数分後、たどり着いたのはラグジュアリーホテル。これまで、外観くらいは遠目で見たことは合ったけれど、足を踏み入れるのは初めてだ。
もしかして、織ってこんな高級ホテルに泊まってるの?
驚愕している間にも、手を引かれるまま優雅な雰囲気のロビーを抜ける。
織はあれからひとことも発していない。
今もなお無言で私の手を引き、エレベーターに乗った。
「織……もう手を離して」
初めから逃げようとは思っていなかったけれど、ふりほどくのも違う気がして、されるがままここまでついてきた。
織は私の言葉を聞き、そっと手を離す。
刹那、織の腕が耳の横に伸びてきて、トンと壁に手をついた。
照明を遮り、私の顔に鼻先を近づけて言う。



