極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 井野さんが私に手を伸ばした直後、私は別の誰かに突然力強く引き寄せられた。
 悲鳴を上げる隙もない出来事に、身を硬直させる。

「すみません、井野さん。彼女、返してくださいね」

 頭上に落ちてきた声で、今私を抱き留めている相手を察する。
 振り返るとやっぱり予想通り織がいた。

「なっ……」

 たじろぐ井野さんをよそに、織は私の耳元に唇を寄せる。

「具合悪いんだろ? 無理しないほうがいい」
「えっ」

 織が私の調子が悪いことを気づいてくれていたのを知り、心のどこかでほっとした。

「皆さんもうこのお店出るみたいですし、井野さん、あとはよろしくお願いします」
「え? ちょっと……」
「行こう、麻結」

 戸惑う井野さんを置いて、織は私の肩を抱いて歩き始める。
 見ると、織は私の荷物も持っていて、初めから私を連れて帰ろうとしていたみたい。

 外へ出ても、織は歩みを止めることなくずんずん進んでいく。

 その歩調と繋がれた手に、どこか織の怒りを感じられる気がして、堪らず声をかけた。

「ねえ、どこへ行くの? 駅はあっち……」

 私の問いかけに、織はぴたりと足を止めた。

 織の背中を改めて見つめる。
 いつの間にか、とてもたくましい後ろ姿になっていて、ドキッとする。
 私の後ろに隠れていた織は、もういないんだって思い知らされる。

 織はおもむろに振り返り、低い声で言った。