極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 その後、井野さんと落ち合ったのは約三十分後。

 井野さんがすでに行き先を決めていたようで、すたすたと歩きだした彼のあとをついて移動した。

 十分ほど歩き、着いたのは一軒の割烹店。

 落ち着いた鶯色の壁に、引き戸の入り口。そして、白く長い暖簾がかかっている。
 なかなか普段は足を踏み入れないちょっと高そうな店だ。

「ここ、おいしい地酒が豊富って有名なんだ。あ、苦手でもビールやワインもあるから大丈夫だよ。料理もおいしいって評判で、いっぺん来てみたくて」
「へえ。そうなんですか」
「個室もあるみたいだか、ら……」

 入口を開けた途端、井野さんの足と口がぴたりと止まった。
 不思議に思ったけれど、小さめの造りの引き戸は井野さんの身体で覆われていて、店内が見えない。

「井野さん? どうかしました?」
「井野!? え! やっぱり来たの!?」

 私の言葉をかき消すほどの大きな声が、向こう側から飛んできた。私は目をぱちくりさせる。

「や、違っ……うわ!」
「だっ、大丈夫?」

 井野さんはなにやら動揺した様子で一歩後ずさり、玄関の段差から落ちてよろめいた。

 井野さんが一段降りたことによって入り口に隙間ができて、店内がうかがえる。

「あれ? 瀬越さんもいるじゃん!」
「えっ」

 目が合った瞬間、名前を呼ばれどきりとする。MDの先輩たちだ。

 よくよく見ると、鞍元さんや開発部の社員もいる。