極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

『あのね。これから、佐久良さんと一緒に食事に行くことになったんだけど、佐久良さんから瀬越さんにも声をかけてほしいって頼まれて』

 織が? そんなふうに名指しで言ったら、私たちの関係を怪しまれたんじゃないの……?

 私はどこまで知られているかわからなくて、おずおずと口を開く。

「え……でも、私はMDでも開発部でもないのに」
『そうだけど、瀬越さんが発案者でしょ。だからきっと、佐久良さんは瀬越さんの名前出したんだと思うよ』

 鞍元さんの回答に、無意識に安堵していた。

 幼なじみということを知られてしまったわけではなさそう。
 隠すのもなにか違う気はするけれど、そうかといって、わざわざ公言することでもない気がして……。

 というよりも、私はまだ織とは昔から知り合いということを言う覚悟ができてないんだ。

 井野さんのときみたいに、企画が通ったのはそのおかげだったのだと噂されるかもしれないから……?
 いや、そんなことよりも。

 私はスピーカーの遠くから織の声を微かに聞き、スマホを持つ手に力を込める。

「ああ。そうなんですか……」

 織の存在が世間的に大きすぎて、幼なじみだっていう実感をまだ持てていないんだ。

 実際、五年間離れていたのもあって、今の織は私の知る織じゃなく思えてしまって。

「ありがとうございます。でも、実はこのあと予定がありまして……」
『あー、そうなんだ。それなら仕方ないね。じゃあ、また。お疲れ様』

 スマホを耳から離し、ぼうっと一点を見つめる。

 うまく言葉では言い表せない、もやもやとした気持ちが残る。

 それをどうにか払拭させたくて、私は残りの仕事を片付け始めた。