極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 大きな道路まで出たところで、立ち止まる。
 顔を上げると織が隣にいなくて、振り返った。

 織は夜風に少し伸びた髪をなびかせ、静かに光る双眼をまっすぐ向ける。
 夜のせいか、織の雰囲気がやけに大人びて感じる。

「そうなんだ。彼氏ができたから、とかいうきっかけじゃなくてよかったよ」

 おもむろに睫毛を伏せ、笑みを浮かべた唇でそう言った。

 どうして。なんで、そんなことばかり言うの。
 もうとっくに、弟だなんてフィルターなくなってる。

 私がジッと見つめ返していると、織は次に、屈託なく笑う。

「それにさ。実家に連絡したら、俺の部屋はもうないって言うんだ。母さんの趣味部屋になってるんだって。ひどいだろ」

 今、目の前にいるのは、昔から知ってる織。
 ずっと隣にいた、あの頃のままの彼。

「ああ。今もいろいろと裁縫しているって、お母さん伝いに聞いたよ」
「麻結も昔、うちにきてやってたよな。不器用すぎて大変そうだったけど」
「もう! その話はしないで、よ……」

 風のように距離を詰め、ふわりと抱きしめられる。

 いつの間にかできた体格差に驚き、男の人の香りに胸が鳴る。

「絶対に俺が麻結の『手』になるって決めてた。だから、麻結の居場所はここ」

 私は大人の織を知ってしまったから、もう前のようには戻れないみたい。

 そうかといって、この感情がなにかって明確にはわからない。
 ただ織の言動に驚いて、ドキドキしているだけかもしれない。

「じゃあ、帰ろうか」

 織はにこっと口角を上げ、さりげなく私と手をつなぐ。

 今、わかることは、この手の温もりが心地いいということ――。