極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 約二時間後に店を出る。私は腕時計を見て、声を上げた。

「えっ! もうこんな時間!」

 織のことでいっぱいいっぱいで、終電のことをすっかり忘れていた。もうタクシーで帰るしかない。

 私はがっくりと肩を落とす。

「送っていくよ」
「そんな、いいよ。どうせタクシーだもん。降りたらすぐ家だし」
「だめ。タクシーだからって安全とは限らない」

 言下に否定され、閉口する。

「それに麻結、ひとり暮らしだろう? どんなところで生活しているのか見てみたいと思ってたから」
「ちょっ、家の中はだめだからね! 散らかってるし!」
「俺は気にしないけど。だって、いまさらじゃない? 昔から知ってるよ」
「私が気にするの! 昔のままだと思われたくないし!」

 いくら織相手だとしても、体裁を気にするくらいには大人になったんだから。
 あとは、今の織と部屋にふたりきりになるのが少し怖い。

 さっきみたいに突然触れられたら、心臓がどうにかなっちゃいそうだもの。距離をとらなきゃ。

 思い出すだけで心拍数が増す。
 並んで歩いている今も、なんか意識しちゃってドキドキしている。

 そのとき、頭にポンと手を置かれる。私はついビクッと肩を上げた。

「わかったよ。じゃあまた今度」

 織は普通だ。私ばっかり、振り回されてる。

「し、織はもう少し日本にいるんでしょ? 実家に戻らないの?」

 私は少し離れて歩き、足元を見ながら尋ねた。

「うん。〝M-crash〟オープンまでいるかな。そうなると、実家からは移動がちょっと大変かもって思ってね」
「あ、わかる。私も同じ理由でひとり暮らしを決めたから……」