極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

「えっ。織のこと……? 急に『どう』って言われても……」

 たどたどしく言葉を紡ぐ。ドクドク鳴る心音は止みそうもない。

 織はおもむろに右手を伸ばす。
 私の髪をひと束掬って広い手のひらから、さらさらっと落としていく。

「どこか頼りなくて、世話してあげなきゃだめそうな弟みたいな存在、だろ。俺を心配して、ずっとそばにいてくれたもんな」

 そして、零れていく私の髪に目を落とし、くすっと笑いながら言う。
 私は織の長く生えそろった睫毛に見惚れるように、視線をはずせない。

 そのうち最後の髪がはらりと織の指から解放され、刹那、手に触れられた。
 するっと指を絡ませ、握られる。

「でも、弟のままじゃ困る。俺はずっと、麻結を女として見てきたんだから」

 迷いのない双眸。
 まるで『逃さない』って言っているみたいで、私はその瞳に囚われる。

 手から織の熱を感じる。指先が脈打つ錯覚に陥り、緊張が一気に高まる。

「麻結、顔赤い。意識してくれてる?」

 空いた手を、今度はそっと掬われ、織の唇が触れそうになる。
 もう耐え切れなくて、私はきつく瞼を閉じた。

「し、き……っ」

 そこに、ノックの音が割り込んだ。織はなにもなかったかのように、私の手を解放し「どうぞ」と返す。

「失礼いたします。先付とお飲み物をお持ちいたしました」

 店員がやってきて、ほっと胸をなでおろす。

 その後、織はなにもなかった顔をして食事をしていたけれど、私は意識してしまって、いつものように織を見ることができなかった。