極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

「麻結は電話でも仕事の話を楽しそうにしていたし、今日も、きっと仕事に夢中になってそこそこの時間になるんだろうなって予想はしていた」
「あっ。そ、そういえば、今日はなんで銀座って知ってたの?」

 ごまかすように話を変える。
 企画書についてこれ以上突っ込まれるのは、羞恥に堪えないもの。

「ああ。朝、オフィスに行ってただろ? あのとき、各ブランド回って歩いてたから。麻結の所属する部署にも行ったら、そのときホワイトボードに麻結は銀座店って書いてたから」
「ホワイトボード……」

 なるほど。それなら理解できる。それにしても、織って抜け目ない。

 変に感心していると、織が私の両眼を覗き込む。

「確か麻結は銀座店の店長していたって聞いたし、余計に思い入れ強そうだ。頑張ってるんだろうなあって」
「だ、だって、まだエリアマネージャーとしては新人だし、頑張らないと」
「本当、麻結は昔から一途だな」
「えっ」
「服が好きって思いひとつで、二十年以上動いているなんて。麻結のこれまでの行動すべて、理由はそれだけだろう? 俺は麻結のそういうところが好きだ」

 この場合の『好き』に特別な感情は含まれない。
 わかっていても、織の柔和な表情に惹きこまれてしまう。

「それに、日本語じゃなく、慣れない英語を駆使して企画書を作っただろ。あんなに真剣な思いを込められたら、俺も応えずにはいられない」
「フランス語は到底無理だったから、せめて英文でって思っただけで……。それでもひどかったでしょ。相手が織だったなんて、顔から火が出るほど恥ずかしい」

 英語なんて学生時代に力を入れて勉強したことなかった。

 そんな私が、辞書を引いたり、英語に詳しい社員を探したりしてまでも、伝えたかった。
 企画を通すことよりも、まず私の思いを知ってほしかった。

 だから、その企画を読んでもらっただけではなく、引き受けてくれると返事をもらったときはどれだけ驚いて、飛び上がって喜んだか。

 織は頬杖を突き、「ふっ」と笑って瞳を細めた。