「準備っていうかね。ファッションプランナーを目指してるの。不器用で裁縫ができない私が唯一〝服を作る〟っていう夢に一番近い場所な気がして」

 市場調査をしてどんな服を作ればいいかコンセプトを考えて、生地選びもして。服作りのすぐ隣にいられるところだと思ってる。

 私の目標はSPINに入社してからずっと変わっていない。……けど、織と久々に会って少し変化した。

「ごめんね。でも今よりももっと知識を深められたなら……織のそばにいても役立てたりするんじゃないかって」
「……え?」

 私は昔から自分の夢だけを追ってきた。とてもやりがいがあって毎日充実していた。

 そこに織が現れた。
 私の夢を一緒に追いかけてくれていた、織が。

「今や、有名デザイナーの織の片腕になれるなんて思ってない。それでも、些細なことでもいいから手伝いになれたらいいなって思って……。じゃなきゃ、織が好きになってくれた私でいられないから」

 自分の思い描いていた未来をあきらめたわけじゃない。
 織と出会って、別れて、また再会して――長年温めていたものが大きく膨らんだ。

 夢は少しずつ形を変えていくものなんだってわかったから。

「め、迷惑かな? やっぱ……り」