極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

 約一時間後。

 織はまだ製作中。
 私と佐渡さんは織を見守るようにその場にいたが、結局できることもないし、織が佐渡さんに『もうひとりで大丈夫だから』と言って帰宅を促した。

 私は佐渡さんを途中まで見送るため、廊下を歩いていた。

 さすがに私まで織を置いて帰るなんてできない。たとえ織に言われても、朝まででもついているつもりだ。

「それにしても、瀬越さんと佐久良さんって幼なじみだったなんてね。もうびっくりした」

 隣を歩く佐渡さんがさらりと言う。
 実はあのあと、冷静になった私はもう織との関係をごまかすこともできないと判断して、佐渡さんに打ち明けていたのだ。

「すみません……。いろいろと騒がれると思って」
「そりゃあ、社内はすごい反応になるだろうね。ま、佐久良さんの詳しい事情はわからないけれど彼がいれば今回の件は百人力じゃない。メンズオンリーのSakuraデザイナーがウエディングドレスを手がけるなんて。ちょっとした記事になりそうだよ」

 本当……いざ織がレディースものを作るとなった今、動揺している自分がいる。

 ついこの間、私自身言ったことだ。もっと織の魅力を多くの人に知ってもらいたいなって純粋に思って、レディースも作ったらいいのに、と。

 しかし今、なぜか素直に喜べない部分がある。
 認めたくなかった。だって、自分の汚い部分を認めることに繋がってしまうから。

 今回はソフィアさんのドレスだからっていう理由が少しはあるのかな……って。
 そう思うと、嫉妬とさみしさが胸の中でどうしてもちらつく。

「そう……ですね」

 こんな自分勝手な感情を悟られたくなくて、懸命に笑顔を作った。すると、佐渡さんはジッと私を見つめる。

「あの……?」
「ああ、やっぱり瀬越さんは彼が特別なんだ」
「えっ。そ、そんなことは」
「隠してもわかる」

 即答されて、思わず黙った。すると、佐渡さんは口角を上げる。

「彼も同じなのが伝わってきたよ」
「はい……?」
「ずっと避けてたレディースものを作ると決めた彼は、瀬越さんのデザインを形にしたいがためにミシンに手を伸ばしたんだと思う」

 佐渡さんの言葉に思考が止まる。

「じゃなきゃ、あんなふうに迷いのない目で服を作れないよ。あれは恋してる瞳だ」
「こ、恋?」
「そう。あのドレスのデザイン画に。それを描いたあなたに」

 衝撃の発言に頭の中が混乱する。
 第三者に気持ちを悟られるほど、織の想いが強いと証明されたみたいで気恥ずかしい。

「明日、私も楽しみにしてる。じゃ、佐久良さんによろしく伝えておいて」
「は、はい」

 佐渡さんは軽く手を上げ、エレベーターに乗って行ってしまった。