極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~

「麻結、ごめ……」
「ついさっきまで、アイデアを練ってたの! 一緒だったデザイナーっていうのが、ウエディングドレスデザイン経験のある人でね!」

 織の言葉を遮り、無理やりテンションを上げて饒舌に続ける。

「すごいんだよ~。次々イメージ膨らませてくれるの」
「麻結……? 本気で受けるつもりなの?」

 驚く織をまともに見もせず、私は軽く笑って返す。

「うん。織もあの場にいたからわかるでしょ? 私たちのほかに見聞きしている人もたくさんいたし……ソフィアさんと約束したから」
「いや、でも……俺のせいで」
「織は織なりの理由があって、ソフィアさんの依頼を受けられないんでしょう? だったら謝る必要ないよ。堂々としていていいと思う」

 織がレディースの服を作らないわけは以前聞いた。小さいときの私の言葉を真に受けていたからだって。

 だけど、その束縛はこの間解けたはず。……にも関わらず、はっきりとした理由も告げず頑なに拒絶しているのは、今回の話はソフィアさんが関係しているから?

  織になにか迷いがあるなら、はっきり聞いたほうがいい。そう頭でわかっていても心が拒否する。

 織の心に私ではない誰かの影があったとしたら……。

 私は織が私をわかってくれているほど、織のことを知らない。
 織がフランスに戻ったら、またしばらく会えない。

 距離が遠くなって、私は本当に大丈夫なの? 向こうに戻っても、ソフィアさんとは頻繁に会ったりするの?

 知りたい。……けど、全部怖くて聞けない。

 私はもやもやを払しょくするように、ただ表情筋に『笑え』と指示するだけ。

「平気だよ。だって念願のデザインをさせてもらえるんだよ。すごくない? しかも腕のいい先輩の力も借りて! せっかくだし、この状況を楽しむんだ」

 そうだ。難しいこととか全部忘れて、千載一遇のチャンスに懸けて楽しもう。

「さ。帰ろっか」

 私は自ら織の手を取って歩き出す。

 ――『悠長に恋人ごっこを楽しんでる』

 ハンナさんが織にそう言っていた。

 織と手を繋いで、夕飯はなににしようかって話をしながらアパートに一緒に帰る。織も、それ以降ソフィアさんの話には触れなかった。

 今の私たちはハンナさんの言う通り、束の間の恋人ごっこをしているだけなのかもしれない。