賢太が【こま】を出して、次の悠馬が【まんが】、明香が【がびょう】で、最後の新田くんが【うきわ】となっている。


どれもあらかじめ、仕込んだものばかり。


でも、あからさまに用意したとバレるのはまずいと新田くんが言った。


だから、探せばどれも学校内にある可能性がなくもない物を考えたんだ。


今回は私が思いついたものが多い。


我ながら、なかなか絶妙なレパートリーじゃない?なんて誇らしげになる。


私たちは教室の真ん中で、3番手の賢太を見守っていた。


賢太が、コマを出すのを__。


「なにやってんだよ、早くしろよ」


次の番の悠馬が、睨みをきかせる。


ビクッと体を震わせた賢太は、すぐにカバンに手を突っ込んだ。


中学の頃からずっと、悠馬にイジメられている。


本格的に殴ったり蹴ったりじゃなく、からかい半分にイジってるつもりだろうけど、周りから見たら完全にイジメだ。


よく耐えてるなって、私はいつも思っていた。


「グスグスすんじゃねーよ!」


なかなかカバンから手を出さない賢太に、悠馬がいらつき始めている。


一体、なにをモタモタしているのか?


「さっさと出せって!」と、横っ腹を蹴られた賢太が床に突っ伏した。


でも__振り返ったその顔には、笑みが浮かんでいたんだ。


そして賢太は、カバンから取り出した。